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女性の視点で、人にやさしい情報の
カタチを追究する。

もっと日本を元気にしたいという考えのもと、『わくわく』する
インタラクティブシステムを研究。また、女性の視点から
さまざまなモノ、サービスのユーザビリティのあり方に取り組む。

大倉 典子 教授

大倉 典子 教授 - Michiko Ohkura -

工学部情報工学科

面白い、それが
常に研究の原動力となった。

私がコンピュータを意識したのは、中学生の頃。当時、コンピュータというのは金融などの電算処理に使用される大型の機械で、一般の人との接点はありませんでした。テレビ番組でその紹介を観たとき、「これからはコンピュータの時代だ」と思ったのがはじまりです。大学で、いざコンピュータのことを学びはじめてみると、周りはみんな男性、女子学生は1%という世界でした。
コンピュータの創生期に立ち会えたのは、とても幸せなことだったと思います。新しい知識や技術に出会えることに、大きな興奮を覚えました。このとき感じた「面白い」が、今も研究の源となっています。社会に出て最初に取り組んだのは、野菜の成長をコンピュータで制御する『農業の工業化』です。その後、出産や子育てと並行しながら学位に挑戦し、以前からの憧れであった人に教えるという職、「先生」に辿りつきました。

高カロリー輸液バッグ「アミグランド」
高カロリー輸液バッグ「アミグランド」

社会的弱者にこそ使いやすい
モノやサービスを。

いまの高度情報化社会は、若い人たちには便利な世の中ですが、高齢者や障がい者、子どもたちにとっては、逆に扱いにくいものとなっています。そうした人たちが技術やシステムの恩恵を受けられるようにする責任が、私たち技術に携わる側の人間にはあると考えて研究に取り組んでいます。研究の柱は、3つあります。1つめは、バーチャルリアリティを駆使した研究です。たとえば、遠隔地の世界遺産の光景を大型画面に3D技術で再現できると、そこに「わくわく」する刺激が生まれます。こうしたわくわくするインタラクティブなシステムを、心拍数や脳波などの生体信号を用いて定量的に測定し、障がい者支援システムなどの開発に応用しています。2つめの柱は、医薬品のユーザビリティの研究です。医療の現場では、看護師や薬剤師など女性従事者が圧倒的に多いのにもかかわらず、男性技術者がその多くを開発しています。そこで問題となるのが、医薬品や医療器具の使いやすさです。これまで扱いにくいものや間違いのおきそうなものも、あたりまえとして受け入れられていました。そのような中で、製薬会社と共同で行った、点滴の直前に2液を混合させる輸液バッグの仕様を改良した研究では、グッドデザイン賞をいただくことができました。これからも、ヒューマンエラーを防ぎ快適に医療サービスを行うために、女性の視点を生かして積極的に取り組んでいきたいと考えています。

海外からの留学生も一緒に、「わくわく」する研究に取り組む大倉研究室のメンバー
海外からの留学生も一緒に、「わくわく」する
研究に取り組む大倉研究室のメンバー

『かわいい』を追究し
世界に日本を売り出したい。

そして、3つめの柱となる研究が『かわいい人工物』の系統的研究です。人は、かわいいものを見てわくわくすると心拍数が上がることがわかっています。これを利用してさまざまな製品やサービスに応用するための研究です。医薬品のユーザビリティの研究にも役立てることができるのですが、色や形、質感などの物理的属性による心拍数の変化など、科学的裏付けのあるデータをもとに「かわいい」を追究しています。クールやエレガントではなく、日本発の感性価値である「かわいい」をキーワードに「日本オリジナル」の力を世界中に送り出せたらと考えています。こうした3つの研究、そのどれにも一番大事なものは「好奇心」です。研究室に在籍する学生には、常に世の中にないシステムをつくるためには、どうしたらいいのかを考えなさいと言っています。自ら物事を考えられる力を育むことと、それを伝えることのできる能力を学生の間に培ってほしいと思います。21世紀の情報工学の時代、かつ女性の時代、女性が活躍できる素地が整った今だからこそ、臆することなく挑戦してほしいですね。

大倉 典子 教授
東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。1979年、株式会社日立製作所中央研究所入所。株式会社日立超LSIエンジニアリング、株式会社ダイナックスを経て、1994年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1999年、芝浦工業大学工学部工業経営学科教授。2001年より工学部情報工学科教授。2006年、輸液バックのデザインでグッドデザイン賞受賞。2007年日本感性工学会技術賞。研究分野:バーチャルリアリティを利用したインタラクティブシステム、感性情報処理、医薬品インターフェース、感覚情報・知識情報・生体情報処理および「人に優しい」情報呈示法の研究