エネルギー・環境

D-1①エレクトロウエッティングによる
液滴移動と熱スイッチ

研究の概要・特徴

エレクトロウェッティング(電気的に濡れ性を制御する技術)を応用し、液体金属の挙動を制御する事で熱の移動方向を制御する熱スイッチの開発を行っています。

エレクトロウェッティングとは、誘電膜の静電エネルギーを増加させると、上部に配置した液滴の固液界面張力が、増加した静電エネルギー分だけ減少し、液滴形状(濡れ性)が変化する現象です(右図)。

高精度な電極成形や表面処理技術により、装置の大幅な小型化と省エネルギー化に優位性がある点が本研究の特徴です。

現在、磁気冷暖房システムにおける熱輸送を担う要素技術として研究を進行中で、電極成形や成膜技術が性能に重要となります。

応用分野・想定される用途

  • 熱スイッチのみならず、広い分野で大幅な小型化かつ省エネ性に優れたデバイスへの応用

D-1②化学反応を利用する熱制御・蓄熱と熱電池

研究の概要・特徴

100℃程度以下の低質熱利用と小規模排熱などに応用できる化学蓄熱と熱電池技術に関する研究を行っています。
化学反応を用いるこれらの手法は、反応速度を高める必要があり、拡大反応面などの新材料に注目しています。

現在、100℃程度以下の熱は十分に有効活用されていない状況にあります。
熱電池は、機械方式とゼーベック熱電素子の間の大きさで、より高性能を原理的に期待できる熱制御素子です。
化学蓄熱は、顕熱、潜熱より高密度で長期利用できる点を特徴としている方式です。
いずれも、現状技術の反応速度は低く、高性能化する必要があります。

本技術の特徴は、小型化に対応可能であり、蓄熱・変換密度を高めることでできます。

応用分野・想定される用途

  • 太陽熱利用による住宅、集合住宅への応用
  • 産業排熱利用、間欠的熱利用プロセスの高機能化
  • 燃料電池排熱、熱エンジン排熱利用、蓄電池温度制御などの省エネルギー機器への応用

D-2①直接エタノール形燃料電池

研究の概要・特徴

バイオ燃料の一つであるエタノールから、常温レベルで直接電気エネルギーを取り出すための燃料電池に関する研究を行っており、発電に有効な触媒の探索に力を注いでいます。
既存の触媒によるエタノール分子内の炭素-炭素結合の分離は困難です。エタノールの完全酸化ができないため、取り出せる電子の数が減り、発電出力が極めて低いという問題点があります。
本研究では、エタノールの完全酸化を目指し、触媒の種類や配合比率を調整し、調整した触媒を以下の3つの方法から性能を評価しています。
(1)発電特性実験
調整した触媒を用いてMEA(右図)を製作し、発電させることで、触媒が発電性能に与える影響を評価します。また、各触媒ごとの最適なエタノール濃度を調べています。
(2)電気化学測定
エタノールの電気分解を行い、各触媒がどの反応経路に有効か調べ、その後の触媒調整に活かします。
(3)走査型電子顕微鏡(SEM)
触媒の担持状況の確認、MEAの内部を観察します。触媒の調整方法、MEAの製作方法に活かしています。

応用分野・想定される用途

  • 常温でエタノールを完全酸化できれば、モバイルバッテリーへの応用が期待できます。

D-2②小温度差熱を利用する発電システムの研究

研究の概要・特徴

温度が低いため価値がないと考えられ利用されていなかった小温度差熱を電気に変換する技術に関する研究を行っています。

小温度差熱とは、我々が生活する環境との温度差が小さい熱源が有する熱エネルギーのことです。これを動力・電力化する技術を対象として、作動原理の理解と熱効率の試算、実用可能性の評価を課題として、基礎研究を進めています。
(1)炭化水素系作動流体を用いた小型蒸気エンジン
  サイクル解析に基づいて作動流体の選定やシステム最適化を検討し  ています。
(2)感温磁性材料を用いた熱磁気エンジン(右上図)
  性能評価のための解析モデル構築と実証実験・計測を進めています。
(3)熱と音波のエネルギー変換を利用する熱音響エンジン(右下図)
  音波発生の実験とそれを再現する解析モデルの構築を進めています。

応用分野・想定される用途

  • 排熱利用によりエネルギーのムダを減らすことに貢献できるシステム