女子の理系進路選択における親の意識の影響に関する調査・分析

研究概要

研究背景

日本では理工系大学に進学する女子学生が世界と比較するといまだ少なく、特に工学においてはその傾向は顕著である。理工系女性研究者、女性技術者の絶対数の少なさはいうまでもない。一方、日本の産業界でも女性の活躍が期待され、なかでも女性技術者の採用が課題となっているが、上記のように理工系の女子学生の少なさが雇用促進の上での大きな障害となっている。

内閣府の統計調査では学問分野の中でも工学分野における女子学生比率が10%程度である. 2014年度に、全国の大学(学部)で工学分野を専攻する女子学生は,工学分野専攻の全学生の12.3%で,社会科学,人文科学,理学・農学,医学,薬学・看護学,教育等全専攻分野別の中でもっとも低い.大学院修士課程も同様に,工学分野を専攻する女子学生は10.9%、全専攻分野別の中でもっとも低い割合となっている.
例えば、理工系の芝浦工業大学でも左図に示すように全国平均とほぼ同じく女子学生比率は10%台に止まっている。また、右図に示すように、工学部の機械工学科4.6%、電気工学科3.2%、電子工学科4.3%と産業界から特に望まれている機械、電気、電子系の女性技術者への要望に応えるには厳しい比率となっている。このような背景のもと、理工系へ進学する女子学生が増えない原因を探り、理工系大学への進学を促すことが必須である。

男女別学生数グラフ

男女別学生数グラフ(工学部男子:88%,女子:12%)

研究目的

本研究の目的は、イノベーションの推進に向けて、人種、性別、専門分野等多様な人材が科学技術分野において求められるにもかかわらず、就業への母体となる大学の理系学部に進む女性が、OECD諸国と比較して少ない日本の現状を問題視し、その実態の詳細と背景を明らかにするとともに、解決策を探ることにある。

具体的には、女性の進路選択に多大な影響を与える母親を分析対象とし、母親自身の経験や子の進路に対する教育観念、意識や育て方、およびそれらに影響する要因を明らかにするための質問紙調査を実施し、子の性別による差異を比較分析する。調査結果を踏まえて、女性の理系進路選択を促進にするための、適切な情報提供や助言等、実現可能な解決策の提案を試みる。

研究計画・方法

母親を調査対象とする質問紙調査を実施し、子の性別による比較分析を通して、女性の理系進路選択を促進する母親のあり方を探る。実質的な調査対象は、子が大学進学にかかる進路選択を経験した年齢層とする。母親の経験による差の影響の分析が重要であるため、理系・文系の専攻があり、また大学院も設置されている女子大学の卒業生・修了生に対して郵送法で行う。

調査結果については、単純集計や子の性別によるクロス集計を分析するほか、多変量解析も行い、母親の経験や意識と子の進路の関係を詳細に把握する。分析には、結果(数値)の解釈を多角的に行うことを重視し、大学のアドミッション担当者や高校の進路指導担当者の意見含め、多くの視点をとりいれる。